でぃーぷ・ひるます VOL.5

でぃーぷ・ひるます

『ゴジラ2000』の生命論  00.1.13

ちょっと前にチケットもらったので『ゴジラ2000』を観たのだ。もー阿部寛サイコー、阿部寛につきるって感じでしたけど、あとで考えてみると、生命論的にもナカナカ面白い、ある意味で傑作かもしれないと思った。

まず敵役として登場する謎の宇宙生命体だが、これは大きな岩塊として登場し、その中に入っている宇宙船らしきものという形で登場するのだが、実ハ、肉体がない。ようするに「霊」のごときものなのだ。この生命体、長い間、宇宙をさまよった末にこの地球にはるか太古に不時着し、阿部寛と佐野史郎の愚行によって蘇るまでは永〜い間、眠っていたわけだ。人間の推理によると、長い時間、宇宙を航行するために自ら身体を捨て去ったのではないか?ということになっている。

さて、身体なき霊的存在となって宇宙を航行する、といえばピンとくる人はくるだろーが、これ、半村良の『妖星伝』そのもの。例によってパクリだ、と言いたいわけではなくて、よくぞ、やってくれた!(パチパチ)という感じ。と、いうのも『らせん』のごとくに遺伝子という「物質」に生命を還元してしまうがごとき思想が、近年のフィクション界では主流だからだ。そんな中で、この『ゴジラ』は、物質なき生命そのもの、という考え方を打ち出しているのだ。

さて、そんな作用そのものとしての生命力、みたいなものがフワフワ動き回ったら、ホラー映画ならぬ『ゴーストバスターズ』的ハリウッドどたばたコメディになってしまうが、そうならぬのが、この『ゴジラ』が生命論をきちんと押さえてるってとこだ。つまり作用性そのものである生命は、それが生命として存在するためには、かならず何らかの「ヨリドコロ」を必要とする、ということだ。我々生物であれば、DNAをヨリドコロにしているし、この『ゴジラ』におけるエイリアンはUFOというキカイ的身体をヨリドコロにしているわけだ。で、そのエイリアンがこの地球を征服するにあたって、新たなヨリドコロとしての身体を求める、そのヨリドコロがゴジラ(の細胞)だということになる。

これに先だって、ゴジラの生命力の秘密が明かにされるのだが、それによるとゴジラの細胞はすべてが体細胞と生殖細胞の特徴を持っていて、どんなにダメージを受けてもそれがすぐに再生してしまう。したがってゴジラは不死身なのだ、ということになる。この細胞を使ってエイリアンは「受肉」しようとするわけだ。普通のSFなら、ゴジラの細胞からゴジラのDNAを取り出し、ゴジラを再生するっていうところくらいしか考えつかないのだ。ところがここでは、作用そのものとしての生命は、むしろDNAという情報をつくり出す側なんだってのがはっきり言われてるわけでしょ。エイリアンが使うのは、ゴジラのDNAではなくて、ゴジラの細胞が再生する際に作用する物質、オルガナイザーG1、という物質。この物質は、別に生命のモトだというわけではなくて、生命が物質レベルで「細胞」という形を形成する時のサポーターでしかない。エイリアンが一度はそれを使って自分自身をウェルズの火星人みたいに形成するが、すぐに崩壊してしまう。この時、科学者たちはオーガナイザーG1は、「ゴジラにしかコントロールできないのだ」と説明するのだが、ここにも一つのはっきりした生命論的テーゼがあるでしょ。つまり、生物というモノは、個々の細胞における物質としての形成によって結果として全体としての個体が形成されるのではなくて、まったく逆に、「個体としての生命」という原理のモトに、個々の細胞がコントロールされて形成されるのだ、ってことでしょう。つまり個体としてのゴジラという生命の原理によってしか、オーガナイザーG1と言えども身体形成には使えない、ということ。

な、ハズだったのだが、何故か、エイリアンのヨリドコロとしてのUFOがゴジラの熱線で破壊されると、あらら、怪獣「オルガ」として登場してきたではあーりませんか。この登場、画像的にも唐突だったが、それまで饒舌に説明していたはずの人間たち、とたんに黙っちゃいました。そーだよなぁ、説明不能だもん。結局この怪獣がゴジラに倒され、一件は落着、となるんだけど、その後の説明ではしっかり、やはりゴジラの細胞を使って復活してたのだ、という話になっている。どーやって「コントロール」したんだろうか。唯一、この点だけが、この映画のマイナス点だった。よーするに火星人形成→失敗というエピソードを削除すればすむ(つまりエイリアンにとってもコントロール可能、ということにする)わけだけど。あるいは逆に怪獣オルガを登場させないとか。

個人的にはあのオルガは納得できないから、後者の方を支持します。だってなんかせっかく強烈なまでの太古にはるか彼方の宇宙からやってきたエイリアンなのに、あまりに「地球っぽい」んだもん。別な生命の可能性、つまり『エヴァンゲリオン』における使徒のデザインを見てしまった後では、ちょっと凡庸すぎ。

まーいずれにしても、こーやって見ると、ナカナカに画期的な映画ではあるでしょ。子供にはもったいネェとは言わないが、ぜひとも御覧あれ。阿部ちゃんの演技だけでもレンタルビデオ代だったら元はとれるし。


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